時間足ごとにトレンドが違うのは普通のこと
同じ銘柄が日足では上がり、1時間足では下がっていることはよくあります。4時間足1本が1時間足4本をまとめたものであるように、大きな足は小さな足をいくつもまとめて細かな波を消したものだからです(時間足の記事を参照)。大きな足での押し1つが、小さな足では数日がかりの下降トレンドに見えます。こうした違いには参加者の違いもあります。数分・数時間単位で売買する人と、数週間・数か月を見て持ち続ける人が、同じ価格を違う理由で取引していて、小さな足には前者の、大きな足には後者の跡が多く残ります。そのため、どの時間足が「本当のトレンド」かを問うても答えはありません。マルチタイムフレーム分析はこの違いをなくそうとするものではなく、時間足ごとに違う問いを受け持たせるやり方です。よくある思い込みは、小さな足のトレンドが変われば大きな足もすぐに変わると考えることですが、小さな足の下落の多くは大きな足に跡も残さずに終わります。
上から下へ:方向、価格帯、位置
よく使われる順序は、大きな足から小さな足へ下りていくことです。まず最も大きな足で、高値・安値が積み上がっていく向きと移動平均線の傾きを見ます。次の時間足で、直前のスイング高値・安値や支持線・抵抗線のような意味のある価格帯に印をつけます。最後に最も小さな足で、いまの価格がその価格帯に対してどこにあるか、損切りを置ける構造がどこにあるかを見ます。大きな足が「どちら向きの流れの中にいるか」を、小さな足が「いまその流れのどのあたりか」を受け持つわけです。順序を逆にすると、小さな足で見た形が先に頭に居座り、大きな足はその判断を裏づける根拠を探す場所になりがちです。大きな足で流れがはっきりしないなら、そのこと自体が情報です。このときは小さな足のシグナルも方向を決めてくれないので、価格帯の上下の端に印をつけておく程度に使う人が多くいます。
大きな足(例:日足):流れの向き、移動平均線の傾き 中間の足(例:4時間足):主要な価格帯、直前のスイング 小さな足(例:1時間足):いまの位置、損切りを置く構造
時間足どうしの比率
3つの時間足は、互いに4〜6倍ほど離すのがよくある慣例です。日足と4時間足は6倍、4時間足と1時間足は4倍です。比率が小さすぎると(1時間足と2時間足)2つのチャートがほとんど同じものを見せ、大きすぎると(週足と5分足)間の流れが抜けて2つがつながりません。暗号資産は24時間取引されるので、週足1本は日足7本、日足1本は1時間足24本です。どの組み合わせが合うかはポジションをどれくらいの期間持つつもりかによって違い、決まった答えはありません。目安をつけるよくある方法は、持つつもりの期間を真ん中の足に置くことです。数日を見る人なら4時間足を真ん中に置き、日足で流れを、1時間足で位置を見るという具合です。時間足を変えるときに指標の期間まで合わせて変える場合もありますが、同じ EMA20 でも日足ではおよそ1か月、1時間足では1日足らずを要約しているという点を分かったうえで使うことが大切です。
大きな足:流れの向きを見る
図は架空の日足60本です。終値が EMA20(20本の指数移動平均)の上にあり、EMA20 が EMA50 の上にあって、2本とも上がっています。高値と安値も順に切り上がりました。日足では上昇の流れの中にあるとまとめられます。大きな足で流れを読むときに移動平均線の並びと傾きを一緒に見るのは、片方だけではもみ合いとトレンドを見分けにくいからです。価格が移動平均線の上にあっても線が平らなら上下を行き来する相場かもしれず、線が上向きでも価格がその下へたびたび沈むなら流れは弱いと見られます。ところが最後の2本は陰線です。日足では長い上昇の中の小さな押しに見えるこの2日間が、次の図の1時間足ではかなり違って見えます。大きな足の陰線1〜2本はそれだけで流れを変えるものではなく、直前のスイング安値や基準となる移動平均線を終値で割るかどうかが、より多く使われる目安です。
1時間足の範囲 日足 EMA20 EMA50 例: 日足60本。終値が EMA20 の上、EMA20 が EMA50 の上にあり、どちらも上向きの上昇の流れです。最後の2本(印をつけた所)が、下の図の1時間足48本です。
小さな足:いまの位置を見る
同じ2日間を1時間足48本に広げると、高値と安値が順に切り下がる流れで、価格は1時間足の EMA20 の下にあります。1時間足だけを見れば、下降トレンドと呼べる形です。ここに日足の EMA20 を水平線として写すと、いまの価格が大きな足の基準線のほうへ下りてきている途中だという位置の情報が得られます。大きな足で決めた価格帯を小さな足の上に写しておき、その近くで小さな足の構造がどう変わるかを見るのが、この方法のよくある使い方です。このとき写した日足の EMA20 は、最後に確定した日足の値だという点を知っておく必要があります。今日の日足が進んでいる間、実際の日足 EMA20 は少しずつ動くので、1本の線というより幅のある帯として見るほうが正確です。小さな足でよく見られる変化は、切り下がってきた高値が初めて前の高値を超えること、あるいは基準線の近くで下ひげが長くなることです。どちらも、それだけで押しが終わったという確認にはなりません。
切り下がる高値 日足の境目 1時間足 EMA20 日足EMA20 例: 上の日足の最後の2日間を1時間足で見たものです。高値と安値が順に切り下がる押しで、価格が日足の EMA20(最後の日足が確定した時点の値)のほうへ下りてきています。
食い違うときの2つの解釈
大きな足は上昇、小さな足は下落というとき、よく2通りに読まれます。1つは上昇中の押し目で、小さな足の下落が大きな足の価格帯の近くで止まり、小さな足の高値・安値が再び切り上がる場合です。もう1つはトレンド変化の始まりで、小さな足の下落が続き、大きな足でも直前の安値を終値で割り込む場合です。問題は、その瞬間には2つを区別できないことです。大きな下落も、はじめは小さな足の押しのように始まります。押しが長引くほど先に買った人たちの損失の許容範囲に次々と届き、その売りがさらに価格を押し下げて、押しが転換へと移っていくことがあります。そのため解釈を選ぶことより、どこで間違いを認めるか(例:日足の直前安値を終値で割り込む)をあらかじめ決めておくことに使われる場合もあります。逆に大きな足が下落、小さな足が上昇の場合も同じ構造で読み、このときは小さな足の戻りが大きな足の抵抗の近くで止まるかを見ます。
マルチタイムフレーム・トレンド表のスコア
このサイトのマルチタイムフレーム・トレンド表は、15分足・1時間足・4時間足・日足・週足ごとに、確定した足で3つの条件を見ます。終値が EMA20 の上か、EMA20 が EMA50 の上か、EMA20 が5本前より高いかです。それぞれ +1 か −1 なので、合計は +3・+1・−1・−3 のどれかになります。日足・週足がどちらも上昇なのに15分足・1時間足に下落があれば、「上昇中の押し目」として別に表示します。スコアは移動平均線の位置を要約したもので、いまトレンドがあるかどうかを示すだけであり、この先も続くという意味ではありません。読むときは、スコアの大きさより時間足ごとの並びを見ます。5つの欄がすべて同じ向きなら流れがそろって一方向の状態で、大きな足と小さな足が分かれていれば前の節で見た食い違いの状態です。+1・−1 は条件どうしが対立している状態で、移動平均線が絡み合うもみ合いの区間でよく出ます。確定した足だけを使うので週足の欄は1週間が終わるまで変わらず、その間の急な動きは小さな足の欄に先に現れます。
よくある落とし穴:時間足を増やすほど答えが簡単になる
時間足を5つほど開いておけば、どの瞬間にも上がっている足と下がっている足が混ざっています。すると、すでに心に決めた方向と合う時間足を選んで根拠にしやすくなります。確証バイアスが時間足を渡り歩きながら働くわけです(チャート分析の限界の記事を参照)。これを減らすには、どの時間足をどの役割で見るかをあらかじめ決めておき、途中で変えないという方法が使われます。大きな足ほどシグナルが遅いことも、あわせて覚えておく必要があります。週足のトレンドが変わったと確認されるには週足が何本か確定しなければならないので、そのときにはすでに価格がかなり動いたあとです。もう1つの落とし穴は、入るときと出るときで時間足を変えることです。日足の流れを見て入ったポジションを5分足の揺れで手放したり、逆に5分足を根拠に入ったポジションが含み損になると日足を言い訳に持ち続けたりする形です。入った理由になった時間足で出る基準も決めておくのが、この落とし穴を減らすよくある方法です。
暗号資産と株で違って見える点
時間足どうしの比率は24時間の市場を前提にした計算なので、株にはそのまま当てはまりません。韓国も米国も立会時間は1日6時間30分なので、株の日足1本は1時間足7本ほど、週足1本は5営業日です。日足が1時間足24本、週足が日足7本の暗号資産と比べると、同じ「日足と1時間足」の組み合わせでも間の距離はずっと短くなります。また株は市場が閉まっている間のニュースが翌日の最初の足に集まって窓が開くので、1時間足の最初の1本がとりわけ大きく、そのあとの足は比較的落ち着いていることがよくあります。日足ではきれいな押しに見えるサムスン電子や SK ハイニックスの2日間が、1時間足では窓1回ともみ合いでできていることもあります。暗号資産は取引所ごとに日足を区切る時刻があり(多くは UTC 0時、日本時間・韓国時間の午前9時)、その時刻で日足が確定することを知っておきます。米国の株価指数や大型テック株は、時間外取引がチャートに含まれるかどうかで小さな足の形が変わるので、見ているチャートがどちらなのか確かめておくとよいでしょう。
実践の点検手順
リアルタイムのチャートで複数の時間足を重ねて見るとき、いちばん紛らわしいのは大きな足がまだ形成中だということです。今日の日足は一日中変わり、今週の週足は週末まで変わります。小さな足が何本か確定する間に、大きな足の並びが画面上で変わっては戻るのを繰り返すことがあるので、大きな足は最後に確定した足で判断し、形成中の足は参考にとどめるほうが一貫します。このサイトのトレンド表が確定した足だけでスコアをつけるのも同じ理由です。
3つの時間足とそれぞれの役割を前もって決めておく 最も大きな足の流れを、最後に確定した足を基準に書き留める 中間の足で直前のスイングと主要な価格帯に印をつける その価格帯を小さな足に写し、いまの位置を見る 食い違ったら押しか転換かを選ばず、間違いとみなす価格を決める 入った理由になった時間足で、出る基準もあわせて決めておく
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